遺言で「私の葬式や法事は近所の親戚だけで簡素にして下さい。戒名はいりません。」などと、お葬式のことや埋葬のことなどを指定して書かれる方も多くいらっしゃいます。

 しかし、親が亡くなっての数日間は次から次へとやるべきことが出てきて、そのときに遺言書を開封して中身を確認する時間はなかなか確保できません。遺言書を生前に書いて保管場所を伝えておいても、遺言書を子どもたちが開封するのは、葬儀が終わって、ひと段落した後というのが非常に多いのです。

 つまり、遺言書に自分の死後の葬儀について書き残したとしても、葬儀には間に合わないということが多々あります。

 そうすると、例えば、資産家で高齢の父親が亡くなり、長男が当然のように地元の名士である父親に恥ずかしくない葬儀をと、盛大な葬儀を挙げ、高い戒名料を相続財産の中から捻出してしまったような場合、葬儀費用をめぐって他の兄弟ともめることになりかねません。

 これを解決する手段として、「死後事務委任契約」というものがあります。

死後事務委任契約とは、委任者(本人)が第三者(子どもなど)に対し、亡くなった後の葬儀、納骨、埋葬に関する事務等やその他の手続きについての代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。

先の資産家の事例でいいますと、死後事務委任契約を長男との間で結び、葬儀の形式や死亡の連絡の範囲や戒名や墓と納骨についても記載し、公正証書にしておくことで、遺産をめぐるトラブルを未然に防止することができます。

 なお、最近流行りのエンディングノートにこれらを記しておくこともできますが、その場合には前もって相続人の方々と充分にお話しておくことをおすすめします。